「あ……れ? ここは」
「病院」
「びょう……いん?」
「そう、病院。ってか、あんたが倒れてどうする」
「え?」
「一応、それ俺のベットなんだけど」
そう言って、呆れたように笑った朝比奈さんは私が占領しているベットを顎で指した。
その姿を見て、パチパチと瞬きを繰り返す。
そんな私の様子を見て、分かってないと判断したのか、朝比奈さんはサポーターで固定されている自分の右足を私に見せてきた。
その怪我を見た瞬間、一気に止まっていた思考回路が動き出す。
「ご、ごめんなさいっ!」
「いや、いい。もう少しそこで休んでろ」
「でもっ」
「いいから」
慌ててベットから降りようとする私をそう言って制した朝比奈さん。
その姿を見て、オズオズと体を布団の中に戻す。
なんだか、申し訳なさと恥ずかしさが相まって、顔が見れない。
それでも、僅かな沈黙の中、チラリと朝比奈さんを盗み見る。
精悍な顔や腕には、記憶の中と同じ、いくつかのかすり傷が見えた。



