今にも泣きだしてしまいそうになって、毛布を頭まで被った。
薄暗くなった世界の中で、猫のように蹲る。
きっと、なんともない。
今日になれば帰ってくる。
何度言い聞かせたか分からない言葉を、何度も何度も胸の内に鳴らす。
そうやって、不安で押し潰されそうな心を必死に抑え込む。
すると――。
ガラガラッ。
静かだった世界に突如生まれた音。
待ち望んでいた扉を開ける音を聞いて、弾けるように毛布を剥ぎ取った。
まだ薄暗い世界に見えたのは、体育館の扉の前に立つ花井さんの姿。
朝日を背に、迷彩服のまま肩で息をしている。
目を凝らせば、その表情をどこか焦っているようにも見えて、一気に心臓が早鐘を打ち出す。
何事かと思って慌てて腰を上げようとした時、私と鍛冶君の姿を見つけた花井さんが、勢いよくこちらに駆け寄ってきた。
その緊迫した様子に、嫌な予感が一気に湧き起こる。



