再び沈黙が私達を包む。

すると、視線を伏せていた花井さんが、ポツリと呟くように話し出した。


「暴力事件を起こして……懲戒免職になりました」


俯いたままそう言った花井さんは、グッと膝の上で拳を握った。

俯いている表情は見えないけど、僅かに唇を噛み締める様子が見えた。

その姿を、鍛冶君と並んでじっと見つめる。

すると。


「だけど、本当は……」


それでも、再び口を開いた花井さんの声は聞き取れないくらい小さくなっていく。

言おうか言うまいか、まるで鯉のように口をパクパクと何度も開いては閉じて言葉を探している。

そんな言い淀むその姿を見て、鍛冶君は勢いよくその肩を掴んだ。

突然のその行動に驚いた花井さんは、勢いよく顔を上げて目を見開く。


「その暴力事件を起こしたのは部下で、その部下を庇って朝比奈さんは自衛隊を去った。そうやろ」


言葉に詰まる花井さんの言葉の先を紡いだ鍛冶君。

その言葉を聞いた瞬間、花井さんの瞳が揺れた。

そして、僅かな沈黙の後、逃げるように視線を伏せた花井さんが小さな声で呟いた。


「自分が……、起こした暴力事件をかばって、朝比奈曹長は自衛官を……辞めました」