ゆっくりと下げていた頭を上げた『花井さん』だったけど、視線は伏せたままで私達を見る事はない。

私から何か話した方がいいのかなと思いつつも、何を話せばいいのか分からず口を閉ざしたまま黙り込む。

いつもは率先してペラペラ話し出す鍛冶君も、何も言わずに花井さんを見つめていた。

すると。


「朝比奈曹長なら、大丈夫です」


俯いたままの彼から落ちた言葉は、その姿からは想像できないほどしっかりしていた。

それでも、その言葉の意味を飲み込む前に、彼は勢いよく顔を上げた。


「あの人は誰よりも勇敢で、頼りになって、信頼のできる人です」

「――」

「いつも誰よりも率先して現場に出て、適格な指示を出し、周りの状況を誰よりも察知する事に長けている人です」

「――」

「上司からも、部下からも信頼のあつい、優秀な自衛官です」


一気にそう言った花井さんは、真っ直ぐに私達を見つめた。

その進撃な瞳を見て、何も言い返せなくなる。


それでも、その言葉に胸がいっぱいになる。

朝比奈さんの知らない姿を垣間見たようで。