守りたい人【完】(番外編完)

僅かな沈黙が私達を包む。

それでも、その沈黙を破ったのは朝比奈さんの真っ直ぐな声だった。


「行方不明者の捜索に向かう」

「――え?」


告げられた言葉に、瞬きも忘れる。

一気に手先が冷たくなっていくのが分かった。


「さっき話していた西田さんの家と連絡がつかないんだ」

「――」

「だから、今から捜索に向かう。雨も止んだ」


そう言って、黒目がちな瞳が窓の外に向けられる。

追うように窓の外に目を向ければ、厚い雲が空を覆っているだけで、あのバケツをひっくり返したような雨は落ち着いていた。

それでも、と勢いよく朝比奈さんの方に視線を向ける。


「危ないですよっ! 近くで土砂崩れがあったって、さっき聞きました! おまけに河川も氾濫しているんでしょ!? 何が起こるか分からないじゃないですか!」

「だから行くんだ」

「え?」

「もしかしたら、家に閉じ込められているかもしれない。こっちに向かう途中で何かしらに巻き込まれたかもしれない」

「――っ」

「それなら、一刻を争う」


取り乱した私とは正反対に、酷く落ち着いた様子の朝比奈さん。

いつもと全く変わらない様子で、淡々とそう話す。