守りたい人【完】(番外編完)

だけど、その声に答える事もなく、思むろに腰を上げた。

そして、徐々に大きくなる胸騒ぎに耐えられなくなり、何も言わずにそのまま勢いよく立ち上がり、引き寄せられるように足を進めた。


「朝比奈さん!?」


そして、大人数の列の最後尾。

いつもより固い表情の朝比奈さんに向かって駆け寄り、声を掛ける。

すると、視線を私に向けた朝比奈さんは歩みを止めて駆け寄ってきた私を瞳に映した。


「どこに行くんですか!?」

「――」

「今から、どこに行くんですか?」


冷静にいようと思うのに、ドクドクと心臓が嫌な音を立てる。

列から抜けた朝比奈さんと私だけが、ポツンと体育館の隅に立っていた。

そんな私達の様子をチラリと一度自衛官の人が振り返って立ち止まったけど、そのまま何も言わずに外に出て行った。


太鼓のようになる心臓を抑えて、何も言わない朝比奈さんを見つめる。


どうしてだろう。

こんなに胸騒ぎがするのは。