――…それから、徐々に体育館の中が騒がしくなり始めた。
いろんな人達が交差して、様々な声が飛び交う。
高齢の方が多い事から、自衛隊の医師とみられる人達が町民1人1人の体調などを聞いて回っていた。
また、小さな怪我をしている人達の手当てにも回っている人達もいて、昨日の夜は寂しかった体育館の中が、いつの間にか人で溢れ返っていた。
鍛冶君と、たまちゃんと並んでその様子をただ見つめる。
そんな中、時折不安そうに項垂れている近所の人に話しかけては、他愛もない話をする。
この先どうなるか分からない不安ばかりが、徐々に大きくなる。
家に帰って家の状況を見たいけど、ここから出る事もできない。
それでも、ようやく雨が上がったみたいで、窓を打ち付けていた雨音は消えていた。
それだけが不安に押し潰されそうな心を落ち着かせてくれた。
だけど、そんな中、不意に視線の端に意識が行く。
徐にそちらに視線を向けると、さっきまで輪になって話していた自衛官と消防団員の人達がゾロゾロと外に向かって歩き出した。
その中にはもちろん朝比奈さんの姿。
「志穂ちゃん? どないしたん?」
瞬きも忘れて、その人達に魅入る私を不思議そうに見つめた鍛冶君が首を傾げる。
その隣にいた、たまちゃんも同じように首を傾げた。



