「世界一周っ!?」
静かな家の中に私の声が響く。
目を見開いてそう言った私の顔を見てニコニコ笑うのは、相変わらずスーパーマイペースの両親2人。
嬉しそうに顔を見合わせて、驚く私の顔を見て笑っている。
そんな動揺する私をものともせず、父はウキウキした様子で口を開いた。
「退職してすぐの時、母さんと2人でハワイに行ってきてな。あ、ハワイは二回目で新婚旅行以来だったんだ」
「あの頃と変わらない建物見つけて、なんだか嬉しかったわぁ」
「あのピンクのホテルだろ? 母さん、昔あそこで――…」
「思い出話はいいから、早く先進んで」
ワイワイとハネムーン話を始めた両親の話を一刀両断する。
そんな話より、今話すべき事があるでしょーが。
そんな私の言葉で我に返った2人は、あぁと言いながら向かい合わせに座ったテーブルの上に一枚の紙を出した。
「来週からな、世界一周してくる」
出された紙には、有名な旅行会社のパンフレットと契約書らしきもの。
そこには間違いなく両親の名前が記されている。



