守りたい人【完】(番外編完)

「返事、聞きたくないなぁ」


ひとしきり心の中で反省会をした後、ポツリとそう呟いて空を見上げる。

どんよりとした夜空に星は一つもなく、今にも雨が降り出しそうだった。


何度目かの大きな溜息を吐いて、その勢いのまま立ち上がる。

心が重たいからか、体も妙に重たかった。


トボトボと下を向いたまま、裏口から入ろうと足を進める。

今朝比奈さんにバッタリ会おうものなら、きっと卒倒してしまう。


だけど、一緒に住んでいる以上、間違いなく明日には顔を合わせる事になる。

今まで通り接して! と言ったものの、果たして自分は今まで通り接する事ができるのだろうか。

告白の返事も、聞きたいような聞きたくないような、そんな曖昧な気持ちだ。


「はぁ」


何回目かも分からない溜息を吐いて、重たい足を引きずる。

伝えたかった想いのはずなのに、臆病風に吹かれて後悔が襲う。


今頃、朝比奈さんは何を思っているんだろう。


そんな事を思いながら、星のない空を見上げた――。