「ん~~~っ」


どこまでも広がる青空に向かって、大きく背伸びをする。

新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込んで、勢いよく吐き出した。


――実家に帰ってきて1週間ほど経った。

目覚ましもかけずに、目が覚めた時間に起きるという、スローライフを私は送っている。

ご飯の用意も掃除も洗濯もしなくてもいい生活は、最高に幸せだった。


「志穂~ごは~ん」

「は~い」


間延びした母の声に返事をして、キッチンへと向かう。

相変わらず母の料理は最高に美味しくて、毎日おかわりまでして食べている。


例の下宿人とは建物さえ繋がっているものの、生活スペースは離れているから帰ってきて数日経つが今の所会っていない。

おまけに昼間はどこかに出掛けているらしく、姿すら見かけなかった。


下宿人専用の食堂もあるみたいだけど、今は下宿人が彼一人だけだから両親が気を使ってか無理やりだか知らないけど、一緒に食べているらしい。

それでも、気を使ってか、避けているのかは謎だけど、私が帰ってきてからは別々に食事を取っている。

だから、バッタリ家の中で出くわすんじゃないかとビクビクしていた私は、ホッと息を吐いた。


それでも気になって、やんわりとあの男の事について聞くと両親は大絶賛だった。

壊れた電化製品なども直してくれたし、家の周りの草刈りもしてくれたし、力仕事は何でも手伝ってくれるらしい。

あの日私を迎えにきたのも、ちょうど駅の方にいたあの男に電話をして迎えにいってもらったんだとか。