それから、すぐに鍛冶君に運転してもらい駅まで向かった。
徐々に茜色に染まる世界を横目に、ギュッと膝の上で手を握る。
もし、このまま二度と会えない事になったらどうしよう。
そうなれば、何も伝えられないまま後悔だけが残ってしまう。
そんなの、絶対嫌だった。
「大丈夫や」
グッと両手を力強く握りしめた時、隣の席からそんな声が聞こえた。
ハッとして隣を向けば、ハンドルを握って前を向いたままの鍛冶君がそこにいた。
それでも視線に気づいてか、チラリと私の方に目を向けた。
「大丈夫や」
そして、私に言い聞かせるようにもう一度そう言って、再び視線を前に向けてしまった。
その言葉に、コクンと小さく頷く。
逸る気持ちと、何もできなかった後悔の念が胸を荒らす。
こうなる事を予想してなかったわけじゃない。
だって、朝比奈さんにとってここに居座る理由は何もないのだから。
でも、本当は心の中で驕れていたんだ。
あの人は私や鍛冶君、この町を捨てるはずないって。
だから、あっさりと出て行ってしまった事に寂しさが募る。



