「朝比奈さんのバカ」
うぅ~と耐えきれなくなった涙を頬に流しながら、呟く。
悔しくて、悔しくて、涙が止まらなかった。
「意地っ張り、頑固者、馬鹿、馬鹿、馬鹿!!」
涙に濡れた声で、空っぽの世界でそう叫ぶ。
頑なに閉ざされた朝比奈さんの心の扉が、更に閉じていくのを感じた。
もっと、頼ってほしいのに。
もっと、甘えてほしいのに。
「どうしたらいいの?」
出口のない迷路に取り残された気分になる。
どこにも解決策なんてなくて、1人足踏みしている。
このまま噂が更に大きくなれば、朝比奈さんの居場所がなくなってしまう気がする。
ここを好いてくれていたのに、嫌いになってしまいそうな気がする。
それが怖くて、怖くて、堪らなかった。
どうにかしなくちゃって気持ちだけが逸る。
ままならない現実に、歯痒くなる。
「朝比奈さん……」
ポツリと彼の名前を呼んで、流れる涙を受け止める。
不甲斐ない自分に嫌気を覚えながら。
――…そして、その日。
一番恐れていた事が起こった。



