あまりにも優しいその声に、鼻の奥がツンとして、慌てて視線を前に向けた。

そして、グッと奥歯を噛み締めて、瞬きを繰り返す。


「別に、何もないよ」

「そう?」

「法要、無事に終わってよかったね」

「そうね。おばあちゃんも志穂に会えて喜んでるんじゃないかな」

「――……うん」

「綺麗ね」

「――」

「お母さんね、この景色を見ると、悩んで、もがいてる自分が馬鹿みたいに思えるのよ」


その言葉に、視線だけ隣に向けると『お母さんだって悩みくらいあるわよ』と言って、ケラケラと笑った。

底なしの優しさと、温かく包んでくれるその温もりに、胸がいっぱいになる。


逃げるように顔を伏せて、伸びきった髪で視界を塞ぐ。

それでも、自分だけの世界になった途端、一気に涙が込み上げてきた。