守りたい人【完】(番外編完)

「どや? 綺麗なもんやろ!」

「はい! 今まで見た中で、一番綺麗です」

「元気、でたか?」

「出ましたよ!」


その言葉に、やっぱり鍛冶君には見抜かれていたんだと分かる。

作った笑顔なんて、鍛冶君の前ではバレバレなんだ。

きっと、塞ぎ込んでいた私を元気づけようと、ここに連れてきてくれたんだろう。

その気持ちが嬉しくて堪らない。


「ありがとうございます」

「ええんや」

「それにしても、よくこんな場所知ってましたね?」

「俺の見つけた秘密の場所や」

「ふふ。そんな秘密の場所を私に教えてもいいんですか?」

「志穂ちゃんは特別や!」

「ふふっ、ありがとうございます」


私の隣に同じように腰を下ろした鍛冶君に、ニッコリと微笑む。

すると、どこか照れ臭そうに笑った鍛冶君が視線を蛍の方に向けた。


草の香りが混じる夜風が頬を撫でていく。

僅かに聞こえる川の流れる音だけが世界に響く。


そんな中、思い出すのは、以前見た満開の夜桜。

励ましてくれた、朝比奈さんの言葉。

その思い出が蘇った途端、会いたくなる。