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「朝比奈さん、遅いですね」
カチャカチャと食器を洗いながら、真っ暗になった窓の外を見つめる。
すると、食べ終わった食器を運んでくれていた鍛冶君が首を傾げた。
「仕事忙しいんちゃう?」
「そうかもしれないですね」
「せっかくの揚げたての唐揚げなんにな」
そう言って、ラップのかかった唐揚げを見つめた鍛冶君。
その隣で小さく溜息を吐く。
ここ最近仕事が忙しいみたいで、3人揃ってご飯を食べていない。
朝も早いからか、まともな会話もせずに家から出て行ってしまう。
だから、ここ最近寂しさが募っていた。
「明日は3人揃って食べれるといいですね」
それでも、そんな心情を悟られないようにニッコリと笑う。
ついネガティブな思考になりそうになって、慌てて話題を切り替えた。
それでも、鍛冶君は何か探るように私の顔をじっと見つめてくる。
「志穂ちゃん、朝比奈さんがおらんで寂しい?」
「え?」
「なんか、ものすっごい元気ないさかい」
「そう?」
お調子者のように見えて、鍛冶君は観察力が凄い。
ちょっとした変化にも気づいてくれて、こうやっていつも気にかけてくれるんだ。



