「良かったです」

「――」

「一緒に頑張りましょうね」


あの朝比奈さんから、こんな事言われるなんて思ってもいなかった。

出会った頃から考えると、想像もできない事だ。

それでも、少しは認めてくれたのだと思う。

そう思ってくれた事が嬉しくて嬉しくて堪らない。


だけど、そんな事言われたら歯止めがきかなくなってしまう。

好きが大きくなって、苦しくなる。

この気持ちを知ってほしくなる。

だけど、今はダメだと何度も自分に言い聞かせた。


そんな事を思っていると、お互い無言になって目の前の山に目を向ける。

すると、今まで黙っていた鍛冶君がむくれた顔で口を開いた。


「な~んか、2人良い雰囲気ちゃう?」

「な、な、何言ってるんですか!? そんな事ないですよっ!」

「っていうか、志穂ちゃん朝比奈さんに甘くない?」

「気のせいですよ! それに、鍛冶君にも優しいと思いますよ?」

「だったら、もっと褒めて~な!」

「何を?」

「この前頑張って徹夜してまで仕事してたんよ!」

「そうだったんですか!? すいません、気が付かなかった」

「ほら! それは俺に無関心やからや!」

「違いますよ。じゃぁ、明日は鍛冶君が好きなハンバーグ作りますね」

「いえ~い」


まるで子供みたいだと思いながらケラケラ笑う。

呆れたような顔で溜息を吐いた朝比奈さんを見て、鍛冶君がブーブー文句を言っていた。

その姿を見て、またお腹を抱えて笑った。