「まぁ、朝比奈さん、山似合うしな」


鍛冶君のイマイチなコメントには朝比奈さんも私もスルー。

その事にギャーギャー騒いでいた鍛冶君を無視して、朝比奈さんに視線を向ける。


「いつからしてるんですか?」

「先週」

「その合間に家具とか作ってたんですか?」

「まぁ」

「ちゃんと休んでくださいよ」


具体的に林業がどんな仕事かはハッキリとは分からない。

知っているのは、山の自然と木々の成長を助ける為に木や枝を切っている事くらい。

それがどれだけ大変かなんて分からない。

だけど、弱音や自分の気持ちを素直に言わない朝比奈さんだから、無理はしてほしくない。

きっと優しいから、自分の事よりも誰かを優先する人だから。


本当は人伝えじゃなくて直接本人の口から仕事を始めた事を聞きたかったけど、朝比奈さんらしいと言えば朝比奈さんらしい。

基本自分の事を話さない人だし、口数も少ないし。


それが少し悲しくもあるけど、嬉しくもある。

だって、ここで仕事を見つけたという事は、この土地にずっといてくれるのかもしれないと思ったから。