鼻息を荒くしながら家の奥を指さした私を見て、キョトンとした顔になった2人は瞬きを繰り返して私を見つめた。

そして、顔を見合わせた後クスクスと笑って再び私に視線を向けた。


「何って、ここは下宿屋だぞ?」


ま・さ・か。

父のその言葉に、一気に嫌な予感が湧き上がる。

いや、薄々感じ取っていた。

下宿を始めたって聞いた時から、既に。

それでも、認めたくなかったんだ。


クスクスと笑う両親を絶望にも似た表情で見つめる。

私の勘がここまで外れてほしいと思った事はない。

それでも、頭の隅では間違いないと確信している。


もしかして。

もしかして。

あの男は――。


「……あの人、ここに下宿してるの?」


今にも震えそうな声で、そう言う。

『違うよ』って言って、という願望を少し混ぜて。

それでも、両親は更に笑みを深くして大きく頷いた。


「2週間前くらいから、ここに下宿している、朝比奈 誠君だ」


そして、声も高らかにそう言ったんだ――。