「こんな時くらい甘えてほしいんよ。困った時はお互い様やろ」
「でも……」
「『でも』はナシや。ええな? そんな体で動き回られたら、おちおち仕事もできんわ」
「――」
「ええな?」
どこか真剣な表情でそう言われた途端、言い返せない雰囲気になり、渋々コクンと小さく頷いた。
すると、優しく微笑んだ鍛冶君が『ええ子や』と言って、髪を撫でた。
――…あの豪雨の日から数日経った。
あの後、朝比奈さんに病院に連れて行って貰った結果、右手右足が全治3週間の捻挫だった。
今は、グルグル巻きにテーピングで固定されているが、やはりまだ痛みがあって動きづらい。
何をするにも不便で、その中で料理が一番の難関だった。
利き手が上手く動かせないから、包丁も握れない。
だから、モタモタと料理をしている私の姿を見かねて、鍛冶君が手伝ってくれるようになった。
手伝ってくれるのは有難いけど、下宿してもらってる人に家事を任せるって申し訳なさすぎる。
まぁ、それを何度言っても鍛冶君は聞き入れてくれないんだけど。
「ありがとうございます……」
だったら、私ができるのは一刻も早く怪我を直す事。
それまでは、甘えさせてもらうしかなさそうだ。



