そんな事をぼんやりと思いながら、その精悍な横顔を盗み見る。
こんな近くで朝比奈さんの顔を見た事ないし、ましてや抱き上げられているこの状況に、冷静になってきた今、恥ずかしくて堪らない。
そんな私とは正反対で、朝比奈さんはいつものようにポーカーフェイスで、何とも思っていないようだ。
その事を少し悲しく思いながらも、ぎゅっと首に回した腕を寄せて距離を縮める。
ユラユラ揺れる世界の中で感じるのは、朝比奈さんの体温。
服越しに伝わるそれが、温かくて安心する。
バレないように体を寄せるが、どんな顔をしていいか分からず逃げるように顔を伏せた。
どうして、こんな気持ちになるのか分からない。
嬉しいような、切ないような、そんな気持ち。
だけど、私はこの気持ちを知っている。
焦がれるような、この胸の痛みを。
「朝比奈さん」
意味もなく名前を呼ぶけど、返事は返ってこない。
それでも、私は抱きしめられる腕の中で身を寄せた。
「ありがとう」
ポツリと呟いた声が届いているかは分からない。
それでも、本当に言いたかった言葉はそれではない気がした。
だけど私はそんな気持ちも知らないフリをして、強く目を閉じた――。



