守りたい人【完】(番外編完)

カタカタと震える私の体をさする大きな手。

何度も大丈夫だ、と囁く優しい声。

その声に少し乱れた心が正常に戻るが、体の震えは止まってくれない。


「ごめんなさい、心配かけて」

「いい。それより立てるか」

「あ、えっと、立てますけど、歩くのはちょっと」


そう言うや否や、私と同じように屈んでいた朝比奈さんだったけど、突然私の膝の下に腕を入れ、次の瞬間軽々と持ち上げた。

あまりにも突然の事に、驚いて朝比奈さんの首に腕を回す。

それでも、我に返って慌てて距離を取った。


「ちゃんと掴まってろ。落ちるぞ」

「え、でもっ」

「運びにくい。俺の首に腕回せ。それで、動くな」


その厳しい声に従わざる負えなく、オズオズと体を朝比奈さんに寄せる。

すると、スタスタと慣れた様子で山道を下り始めた朝比奈さん。

あんなに泥道で歪んでいるはずなのに、安定した足取りでスイスイと山を下っていく。

よほど山道に慣れているみたいだ。


そんな事を思いつつ、恐る恐る視線をずらして朝比奈さんの顔を盗み見る。

私と同じように、全身ずぶ濡れで真っ黒な髪が額に張り付いている。

だけど、その鋭い目は真っ直ぐに前だけを見ていて、私を抱き留める腕はビクともしない。