『志穂は、しっかりしてるから、俺がいなくても一人でやっていけるよな』




3年付き合った彼から聞いた最後の言葉は、それだった。

同じインテリア関係の会社に勤める、5つ年上の彼。

仕事もできて、落ち着いていて、しっかりしていて、大人な人。

子供な私は、そんな彼に必死に釣り合おうと背伸びをしていた。

聞き分けの良い女を演じていた。


そんな私を好きでいてくれた彼とは、結婚も考えていた。

一緒に住む話も出ていたし、両親にも会わなきゃねって話していた。


とうとう私も結婚!

ウキウキと定番の結婚雑誌も買って、髪も伸ばして、地道にダイエットも始めていた。

それなのに――。


ある日、忘れ物をして真っ暗な事務所に戻った瞬間見たのは、私の後輩とキスをする彼。

大事そうに髪を撫でて、目を見て微笑んで、何度も何度もキスをしていた。

そんな表情、私には見せた事ないくせに。