愁桃の立場から見れば、何年も片想いしてる幼なじみの彼氏が別の女の人といるなんて。

ましてや、天ヶ瀬くんのことをよく思っていないわけだから。

何か言うに違いない……。


だけど、それを止めようともできない。それは目の前のこの光景が自分にとってあまりにショックなもので

自分が思っている以上にダメージが大きかった……情けない。


なんとかしなきゃいけないのに……。


ただ今は……瞳から溢れそうになる涙を堪えることしかできないなんて……。


ギュッと目をつぶり、下にうつむいた時だった。


腕を引かれたと思ったら。


「……帰んぞ、もも」


愁桃が一言だけ呟いて、わたしを半ば強引に引っ張ってその場をあとにした。

立ち去る寸前……何も言わなかったけれど、愁桃の鋭い視線が天ヶ瀬くんに向けられていた。