愁桃は驚いたのと、気まずさがあるのか、声を出さない。
わたしは、全身が震え出して、さっきの苦しい涙とは違う涙が流れる。
どうして……さっき帰ったはずの天ヶ瀬くんがここにいるんだろうと、真っ白になりそうな頭の中で考える。
「……あー、そーゆーこと」
静かな教室に発せられた言葉は抑揚がなく、冷めたような、どうでもいいという感じで……。
とっさに、違うと否定しようとした自分はどこまでバカなんだろう。
違わないのに……。ぜんぶわたしがやってしまったこと…。
ただ、唇を噛み締めることしかできない。
「俺は忘れ物取りに来ただけだから。あとは自由にやってれば?」
そう吐き捨てられた。
ダメだ……ボロボロ大粒の涙が止まりそうにない。
ぜんぶ自分が悪いのに…。

