だから、教室を出ようとした。

だけど、わたしの行動を先に読んでいたのか、すぐに愁桃に腕をつかまれて阻止されてしまう。


「……離して…っ、今は誰の顔も見たくな……」


泣きそうになるのを堪えながら、つかまれた手を振りほどこうとしたのに。


「だったらこうしたら顔見えねーからいいだろ?」


そんなことを言って、優しくギュッと抱きしめられた。


「これならいいだろ?」

「よ、よくないし…バカ…ッ」


「お前さっきからバカバカってなー」


呆れながらも、泣き出しそうなわたしの背中をさすってくれる優しさがある。


「もう……放っといてよ…っ」

優しくされたら、嫌でもその優しさに甘えてしまいそうだから。

そんなことをしたら愁桃を傷つけてしまうってことがわかってるから。