「ももってさ、男がどーゆーのかちゃんとわかってんの?」

「へ……」


「そーやって隙見せてばっかり」


さっきまでつかまれていた手首が解放されたと思ったらギュッと抱きしめられた。

天ヶ瀬くんの匂いに包まれるだけで、また心臓がうるさい。


「ズルイ……よ」

「何が?」

思わず出てしまった言葉。
飲み込むはずだったのに漏れてしまった。


言葉通り、天ヶ瀬くんはズルイ人。
惑わせるようなことばかり言って、

こうやってわたしに触れる。

そのくせ、わたしのことなんかたいして好きでもない。

ただ、自分のものに手を出されるのが嫌なだけで、それがわたし限定の独占欲ってやつではない。


あぁ……もう。

好きで好きで仕方ないのに、目の前に触れられる距離にいるのに

気持ちは手に入らないなんて。