数日後。

私は退院することができ、静岡の実家に帰った。

事故に遭う前までは、実家を離れて、暮らしていたらしい。

母親に、｢以前住んでいた部屋の鍵が欲しい｣と頼んだが、｢そんなことよりも体力回復のため休んでなさい｣とはぐらかされた。

私は納得いかなかった。

｢何か見せたくないものでもあるの？｣

私は母親を問い詰めた。

母親は、顔を曇らせた。その時、姉が子供を連れて、実家に帰ってきた。

｢え、何。修羅場？｣

姉は困惑そうに母を睨みつけた。
そして、母を説教しはじめた。

｢お母さんさ、あかりが記憶を失ってること分かってるよね？あかりだって、ホントは記憶を失いたくて失ってるわけじゃないんだから。｣

姉は、ブツブツ言いながら、母と私の分のお茶を入れて、買ってきたケーキを切り分けて、皿に盛り付けた。