「ただいま」


「おかえりなさい
あ、そうだわ笑夢」


お母さんはキッチンから私がいる居間に手を拭きながらやってきた


「なに、お母さん?」


「さっき貴方が前面接に行ったバイト先からさっき電話があったわよ
また後で連絡してほしいって言ってたわ」


ニコニコしてるお母さんは私にそれを告げるとまたキッチンに行った


とりあえず電話しなくっちゃね


プルルルルルル



ガチャー


「はい、こちらFlowerレストランです
ご予約ですか?」


「えっと、バイト希望で先日そちらに面接をしてもらった桃井笑夢です
先程お電話をもらいまして再度かけさせてもらいました」


「も、桃井さん?」


「え、はい」


「ただいま店長をお呼びしますので少々お待ちください」


どこか聴いたことのある男の子の声


何故か、私の名前を聴いて動揺してたし…
なんでだろう?


ま、いっか!


「もしもし
店長の森田です
桃井笑夢さんですか?」


「こんにちは
はい、桃井笑夢です」


「えっと面接合格です!
それでバイトは約束通り来週からなんですけど…」


「はい!
来週からですよね、行けます!」


「それが…1人急に辞めちゃって
言いにくいんだけど、明日からとか無理かな?」


「えっ?
あ、明日?!」


あの、店長さん
ほんと急ですね


「む、無理だよね…」


電話越しでもわかるほどの店長さんの慌てぶり


ここで行けませんなんて言ったら私のイメージダウンにも繋がる…


ええい!!
仕方がない!!


「店長さん!
いけます、明日からバイト行きます!」


「ええ?!
ほんとに、ありがとう桃井さん!」


「大丈夫ですよ」


「じゃあ明日7時半からお願いします!」


「はい、失礼します」


ガチャー


それにしてもいきなりすぎる
本来ならば来週からなのに明日からだなんて
とにかく、やるしかない

バイトの件も終わったし部屋に行こう


久しぶりの学校で疲れた為、制服のままベッドにダーイブ!!

ボフ!!


やっぱりベッドは最高だよ


お日様の匂いに包まれた私は郁結のpixを返すのも忘れてスヤスヤと寝てしまった




アホーアホー


カーカー


烏の鳴き声がする…


ここは夢?現実?


「~~~!!」


ん…?
誰かが何か言ってる


「こーら、笑夢!
制服のまま寝ないでちょうだい!」


「わっ、お母さん!」


「もうお夕飯できてるから着替えて降りてらっしゃい」


え、夕飯って?

時計を見るともう7時をまわってる


「えええ?!
うっそ?!!」


慌てふためいてる私は大きな音を立ててベッドの上から落ちてしまった


ドデーッン!!


「いててててっ…
あ、郁結のpix返さないと」


pixには1とついている

郁結とのトーク画面を開くと


「ま、クラス同じでも話さないでしょ(笑)」


ってきてた


話さないんじゃなくて
話せないんだよ…


私はいつだって郁結に話しかけたいのに、そんな勇気はなくて


ただ挨拶しかできない
弱虫野郎なんだ


『そうだね
私は話したいけどな(笑)』


pixだとこうも正直に言えるのに…


「笑夢、まだなの?」


「あ、今行く!!」


お母さんに何度も呼ばれて私は階段を降りて居間に行った


また後でpix返そっと


「「いただきます」」


お魚、サラダ、味噌汁、ご飯という基本的構成なお夕飯


でも私はお母さんの作るご飯がとってもスキ


味は濃くも薄くもなく、私の健康を考えて作ってくれてる素晴らしい献立


そんなことを思って食べていると…


「新しいクラスはどう?
梨花ちゃんと同じクラスだった?」


「うん、一緒だったよ」


「あらそう
よかったわ、笑夢は昔から友達作るの苦手だからね~
梨花ちゃんと同じって聴いてほっとしたわ」


お母さんも梨花のことはすごい信頼している
私と梨花の差はなんなのだろう


愛想のちがい?


可愛さのちがい?


頭の良さのちがい?


わからない
けど前に、『梨花みたいに完璧な子に生まれたかった』
って言ったら、

「私は完璧じゃないよ
それに、笑夢には笑夢のいい所があるよ」


って言ってくれた


梨花となにか争うってなったら絶対勝てないだろうなって改めて思った


「ご馳走様でした」


ご飯を食べて数時間お風呂に入った


やっと一息ついたところで、郁結に返信しましょ


『じゃあ話しかけにおいで』


意地悪だ


郁結は私の気持ちを知ってるのに


恥ずかしがり屋ってことを知ってるのに


『恥ずかしい』


『なんで?』


『だって私、郁結のこと好きだもん』


『あー、うん』


どうしていつもあやふやな答えしか返してくれないの


聴きたいけど聴けない


この関係を壊したくはないから


好きでいさせてくれるなら…



まだ…貴方の優しさに縋っていたいから…