教室に入ると、ふわっと甘い匂いが漂っていた。




ドアの近くにいた女の子が私に気がついて『ハッビーバレンタイン』と可愛らしいチョコレートをくれた。





「きょうちゃん今年のチョコはなにー?」



「タルト!」



「交換しよっ」




私のお菓子でたくさんの子が笑ってくれるのは嬉しい。




でもね、と少し卑屈になってそんな考えを振り払うように頭をふるふると振る。





そこで、、知夏が少し離れた席でじっと見つめていることに気がついた。



そんな知夏にほんの少し笑いながら、指でバツ印を作った。




そんな私にはぁっとため息をついた知夏。




ごめんね、弱虫で。




このチョコは



このマカロンは、今年も渡せそうにないみたい。