杏果 side









「甘いのいらね」




今年も小さく落とされた雨水くんにとって何気ない一言が、この小さな紙袋に隠された想いが捨てられるだなんて、君は知らない。






知らないんだ、よ。





「そっかぁ」




あはっと笑って見せると苦い顔をするのは毎年のことで。



そのあとに、大して興味もないのにこう聞くの



「誰にあげるの?」



「今年はね、クラスの女の子でしょ、部活の先輩と後輩でしょ、それからね………」





“ 雨水くん ”




あーあ。せっかく甘さ控えめで作ったのに。




今年も、お兄ちゃんの口に入るのかあ。





そう思うと少し寂しくなって、左手に持った紙袋を揺らした。