走れば追いつく。
緊張と、怖さと、不安な気持ちで崩れ落ちそうになる足を叩いて気合を入れると、背中を追って走り出した。
・
「う、雨水くんっ!」
曲がり角を曲がってみるも、その背中はなくて。
「う、ぁ……っむく、っ」
何年ぶりかに名前を呼んだ。
中学生の時、
『ねぇ、あんちゃんって雨水くんと付き合ってるの?』
安西のあんをとってあんちゃん。
そのあだ名で呼んでくれる人が多かったあの時代雨水くんとは、椋、杏果と呼び合う仲だった。
そんな矢先に飛び込んできた、根も葉もない噂。
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