「あ、でも甘いの……」



「好きだけど?」



「へ!?」




甘さ控えめに作った私の努力を返して……ってそうじゃなくてっ!!!





「甘いの好きなの!?」




「杏果の作ったチョコなら大歓迎」




「あたまだいじょうぶ ………?」




「ほっとけ」




そういうと頭の後ろで組んでいた腕で口元を隠してしまった雨水くん。





「で?くれるの?くれないの?」





目線だけをこちらに向けて………




「ずるい」



「杏果こそ」




ふわり、と微笑む雨水くんにもう一度『ずるい』と零す。




そして、タルトを渡した。




一度だけ恨めしそうに視線を寄越した雨水くんに気が付かないふりをして、俯いた。




この期に及んでまで小さな紙袋を渡せない自分が嫌になる。