女子の黄色い悲鳴が上がって、私は思わずそちらに目を向ける。


体育の授業。バスケットボール。コートの半分は私たちのクラスが、そしてもう半分は二年生の先輩のクラス。


「人気だねえ、相変わらず柚月の彼氏は」


そう、先輩のクラスだ。


うちのクラスの女子も、先輩のクラスの女子も、みんな柳先輩に釘付け。


先輩の手の中のボールはとても軽そうで、見事なドリブルで相手を抜き、確実なシュートを決める。


「たしかにうまいねえ、バスケ」


「…ほかに感想ないの?彼女さん」


なんだか、居心地悪い。


笑ってる先輩が、今は遠い。


しょうがないよね、先輩はみんなのものだもん。


わかってるよ、そんなこと。


「柚月ちゃーん!」


声に、顔を上げると、コートの中から大きく手を振っている先輩が…


「見てた!?俺カッコよかったー!?」


私は無言で手を振り返す。


「…女子の目がやばい」


そう、咲の言う通り。怖すぎる。


「悠人!試合再開だから!早くー」


甘い声がして、先輩の腕を引く。


あ、あの人…泣いてた人だ。


先輩の腕に絡められる細い腕に、なぜか胸がもやっとする。


…そんなこと思う資格ないのにね。