センパイの嘘つき



「…なんで?」


「…今日のは、私が作ったから…下手、だし」


どんどん声が小さくなる。…恥ずかしい。


「なにそれ、余計食べたいんだけど」


「だっダメです!」


ジリジリと近づいてくる先輩から、私も逃げるように後ずさりする。


「えいっ!」


次の瞬間、先輩の腕が輪っかを作り、私をくぐらせる。


「捕まえた♡」


近すぎる距離に、息が止まる。ギリギリ触れない距離。身動きが、とれない。


「っ…こんなの卑怯です!」


「降参しなさい、柚月ちゃん?」


先輩の笑顔が、悪魔に見える。


でも、恥ずかしすぎてこの体勢はもう…


私は観念してお弁当箱を差し出す。


「わーい!やった!」


先輩は腕を解き、卵焼きを1つつまんで私を解放する。


「あの、本当に美味しくないですからね…?」