「どうしようかな。顔、切り刻んじゃおうかなあ。…それでも、凪は楓ちゃんを大事に出来るだろうか」

あたしは、柊兄の顔を見た。

だって、怖いから。

怖い相手からは、目をそらせちゃいけない。

あたしは、自分を落ち着かせる。

呼吸も、心拍数も、制御する。

ゆっくり、ゆっくり。

こんな奴、怖くない。

「そんなことしたら、自分が犯罪者になるってことは、分かってる?」

狂気の浮かんできている瞳の奥に、ちょっと、戸惑いが見える。

「そこまでして、あたしを傷だらけにしても、柊くんは困らないよ」

また、ひるむ。

「あたしに対して、ものすごく罪悪感を持つことは確かだろうけどね。…だからって、友達の一人がケガをしたくらい、何のダメージになるんですか」

ナイフ側の腕を、力いっぱい、横に振る。

柊兄の腕に当たって、ナイフが一瞬離れる。

その隙に、あたしな自分の顔の前で、両腕をクロスする。

柊兄はバカだ。