それを視覚でとらえようとしたら、壁に押し付けられた。

金属音の元は、ナイフ。

折り畳みナイフを開いた音。

…何で、こんなものを持ち歩いてるんだろう。

何で、こんなものが簡単に手に入っちゃうんだろう。

用途がちゃんとしてれば、怪しくも何にもないんだろうな。

でも、こんな薄暗い、住人以外誰も来ないような場所で、壁に押し付けられて、ゆっくりと、その刃先を頬に近づけられていると、その用途に疑問しか感じない。

可愛くも見えるデザインの刃先が、頬に押し付けられる。

冷たさにゾクリと身体が震える。

柊兄の表情に、喜びが走る。

うわ、ダメだ。このヒト、本気でヤバいよ。

…知ってたけど。

だから、逃げたかったのに。