「知ってたか」

「でも、いいなあ」

「追い掛け回すのが?」

「う…ん。何ていうか。オレ。柚葉さん、好きなんだよなあ」

「…知ってる。前に聞いた気がする」

「女の子でああいうヒト、いないかなあ」

ああ、分かる気がする。

ちょっと、可愛いんだよな、柚葉さん。

顔とか、仕草とか。

ヒトが好きですぐに寄ってっちゃうとこは、一緒にいたらしんどいかもしれないけど。

「オレ、頑張るわ…」

「うん。大丈夫、変な目覚め方も、今日で終わりだよ」

「何で?」

「そんな、あたしがその目覚める瞬間の夢、壊しに行くからに決まってるじゃん。これ以上、柊くんを苦しめさせて
たまるか」

おにぎりの袋を握りつぶす。

と、代わりのおにぎりが降ってきた。

「それは頼もしい。これ。前払いのお礼。…頼んだよ」

「まかせて」