俺は時間が止まってしまったかのように体が動こなかった。


まだ白石の温もりが俺の体に残っている。



ハッと気をもどしたときには
白石はあいつに引っ張られてどこかへ行ってしまった。


追いかけるのが遅くなって見つけることはできなかった。


そして戻ってきたキャンプファイヤーの前である光景を俺は目にした。



「え、真由美まだそれ持ってたの!?」



そこにいたのは麻生と阿川と吉永だった。


白石を見ていないか


そう尋ねようと思って近づいた。


「だってコレ高津くんがとったやつでしょ?そんなの捨てられないじゃない。

でもあんな現場見たら捨てるしかないよね。
コレ見てると腹が立ってくるんだもん。

どーせなら燃やしちゃおうよ!」



彼女たちの会話に俺の名前が出てきて、

俺は少し立ち止まってその話を聞いた。


そして、麻生が伸ばした手に握られているものを見た瞬間、


俺は瞬発的に麻生の腕を掴んでいた。


麻生は俺の顔を見るなり、血の気が引いたように真っ青になっていた。

俺が力強く握ると、彼女の手からポトっとそれが落ちた。



「なんでそれを、お前がもってんだよ。」



彼女の足元に落ちたのは、


俺が



白石にあげた




ストラップだった。






何も答えない麻生に腹が立って

俺は無意識に手に力を込めていた。


「高津くんイタイッ」



俺はそれでやっと正気がもどり、

彼女の腕をはなした。


それでも黙り込むそいつを見ていると

俺はグッと握り拳に力が入っていた。



「あの子が…白石さんが高津くんにベタベタしてるから

だから、少しいじめてやろうと思って…

ごめ____」



彼女の言い分を聞かずに

俺は


「違う」



そう言った。



「あいつはそんなやつじゃないよ」



違う、白石は

俺に何かを求めて近づいてきているわけじゃない。


あいつは純粋に俺と仲良くしてくれていた。



「違わないじゃない!!

ならさっきのは何!??

友達同士なら抱き合うっていうの!??」



さっきまでの様子と違い、


本当の素顔を麻生はさらけ出してきた。






なんで白石があんなことをしてきたのかはわからない。


ただ一つだけはっきりと言えることがある。






「友達なんて思ってない。









俺はあいつが好きだ。」







これだけは確かだと






誓って言える。










俺は砂まみれになったストラップを拾い上げた。





「それにコレ、たまたま取れたからあげたわけじゃないから。

コレは俺が初めてあげる女子へのプレゼントで、
白石以外のやつにあげるつもりなんてないから。」





俺はそれだけを言い残して



ストラップについた砂を払って、それをポケットにしまいこんだまま強く握りしめた。