「もう…出てって!」



「どうした…蒼衣?」



涙がこみ上げて来て、


視界がぼやけて歪んで見える。



またあの時と一緒だ。




また私はたく兄を困らせている。




でも、たく兄が悪いんだよ。



近づいてくるたく兄の手を払い除け、私は言った。


「…私はたく兄のこと、お兄ちゃんだなんて一度も思ったことなんてない。



私はたく兄の妹なんかじゃないよ…?





私は…本気で…たく兄が好きなんだよ!」




ボロボロとこぼれ落ちる涙を何度もすくい上げて言った。



あの時と全く一緒だ。



どうせまた、この気持ちはたく兄には届かないんだ。


両思いだなんて期待はなからしていない。



たた、私の初恋を認めて欲しいだけなのに…



ちゃんと私の初恋が存在しているということを分かってもらいたいだけなのに…




「知ってたよ。」



え…



返ってきたたく兄の言葉はあまりにも予想外のものだった。



「蒼衣が俺のこと好きだったってことちゃんと知ってたよ。

だって蒼衣が言ってくれたんじゃん、好きって。忘れるわけないよ。


だから、再会したとき、本気で後悔した。
いつの間にかこんなに大人になってて、美人になってて、

誰にも取られたくないって思った。


告白のこと忘れたフリをしてたのは、蒼衣が過去のこと気にして俺と気まずくならないようにするためだった。


だけど、まさか
今も好きでいてくれてたなんてね思わなかったよ。」



真剣な顔で嘘偽りのないような、

そんな目をしながら私にそう言った。




ちゃんと届いてたんだと嬉しさがこみ上げて来る反面、恥ずかしさも溢れる。


またも勢いで告白しちゃってるよ!!!



私は真っ赤になった顔を手で多いながら、しゃがみ込んだ。


まだ、頭で整理しきれていないことを

順を辿って気づいたことは、



たく兄は私を思って、忘れたフリをしてたってこと?



じゃあ、最初から

たく兄は私に真剣に答えてくれてたんだ。




何がどうあれ、私の初恋は失恋であることは間違いない。

ただ、ちゃんと存在を認めて欲しかっただけだった。



たく兄のその言葉で私は満足した。