「俺、ずっと思ってたんだよな」
今度はさっきと違うトーンで、話し始める。
私はつい、自分の手を止めた。
「蒼衣が妹だったらいいのにって…
だから、再会したとき、マジで嬉しかったんだぞ。」
え、何この状況。
喜ぶべきなんだよね?
たく兄にぎゅーってされて喜ぶべきなんだよね?
でも、こみ上げてくる私の気持ちは
嬉しさではなく、腹立たしさだった。
ねえ、たく兄
忘れてない?
「ねえ、たく兄覚えてる?
たく兄が引っ越す前に私が言ったこと…」
「え、ごめん、何か言ってたっけ?」
やっぱり…
私の気持ちはたく兄にはちっとも届いてなんかいなかったんだ。
「私、たく兄が好きって言ったんだよ…?」
「あー、そうだったな!
あれ超嬉しかったよ!マジでキュン死にしそうだった!可愛い妹よ、ヨシヨシ」
パシン
私はたく兄の手を払い除けた。
いい加減、分かってよ。
なんでちゃんと受け取ってくれないの?
私はちゃんと本気でたく兄が好きだったんだよ?
目を見開いた驚いている様子のたく兄。
何、その顔。
私の気持ち馬鹿にしないでよ。
ずっとずっと好きだったんだよ。
やめてよ、そんな顔しないで。

