ガラガラッ
蒼衣が眠ってすぐのこと。
蒼衣の次に保健室に入ってきたのは浅井だった。
「浅井先生、どうかしたんですか?」
「ちょっと心臓の辺りが痛くて…
見てくれますか?、あずさ…先生?」
すると浅井はネクタイをとり、自分のワイシャツのボタンを上から一つずつ外していった。
筋肉質で魅力的、色気の漂う男らしい体があらわになる。
それを平気な顔で春川は見ていた。
言われた通りに、心臓の様子を見るために浅井の胸の真ん中に手をあてた。
その手からは浅井のドクンドクンと波打つ心拍が聞こえる。
「どうして欲しいの…?」
甘い声で、潤んだ瞳が俺を見上げるようにして見ている
なんて素晴らしい光景だとどんな男でも思ってしまうだろう。
「優しく摩って下さい…」
浅井はそれまでは違い頬を赤らめ、熱っぽい顔になりながら言った。
すると、要望通りに春川は彼の胸のあたりをゆっくりと優しく摩る。その仕草はなんとも色っぽい。
いつまで続くのだろう
この小芝居は
だけど、彼らには途中で投げ出すことなんてできない。
彼らはもう止まらなかった。
「…先生、そろそろ芝居やめましょ…
……俺、もう恥ずかしいです。」
ベッドで下になっている浅井が腕で顔を隠しながら言った。
「やめてよ…先生だなんて…
あずさって読んでって言ってるじゃない」
彼の顔をしっかり見るために彼女は彼の腕を掴んだ。
恥ずかしそうに頬を赤らめる彼の顔は春川にしか見ることができないであろう。
浅井という誰しもが憧れるような人が
一人の女の前では可愛い年下であり、いじめられても顔を赤くしている。
彼の唯一の欠点のようにも見える。
「あず…さ…さん」
そう何度もか細い似合わない声で彼は呟いた。

