「はい、これ」


立ち上がり、鞄をガサゴソしていると思ったら、たく兄が取り出したのは何やら長細い箱で、可愛らしいラッピングがされていた。



黒色の包装紙に青いリボン、まるで私のためのプレゼントのようだった。


「…なに、これ?」


「蒼衣にプレゼント」


「え!?なんで??
私、誕生日じゃないよ?」



受け取らずに手をふるふるしていると、
私の右手を掴んで、それを握らせた。


開けてみてと言われた、
そっとリボンをほどき、包装紙を広げ、
出てきた箱を開けると



「え…これ」


「どう?気に入った?」


それは今日私が見ていたハートのリングに青い石のついたネックレスだった。


「なんで…」


「あれ?嫌だった?」


びっくりし過ぎて声が出ない私をみて

不安げな顔をするたく兄。

私は慌てて言った。

「違う、そうじゃなくて…!
私が欲しかったやつだから…びっくりしちゃって…」


私の言葉に満足したのかたく兄は嬉しそうだった。


「ありがとう」


「もっと喜んでよ。蒼衣それ欲しかったんだろ?俺の声も届かないくらい魅入ってたくせに。」



「でもこれ…高かったんじゃ…」


そう、あの時私はこの値段を見てしまった。


高校生の私には到底買えっこない値段。


たく兄は大人と言っても大学生。

それに、お姉ちゃんのイヤリングも買ったのだから、財布はピンチだったのではないだろうか。



そう考えていると

頭にポンポンという感触を感じた。


「大丈夫、気にすんな。
蒼衣に似合うと思ったんだ。
大事にしろよ。」



なんていう洞察力。


ほんとたく兄にかなう男なんて他にいるのだろうか。


私も彼に魅了させられた女の一人だ。


虜になって、

二度と他の人なんかに目を向けられなくなる。



私はずっと




たく兄のことが



大好きだ。