ガチャガチャガチャ


インターホンを鳴らさずに、鍵のかかった玄関ドアをガチャガチャとさせるのは、決まっていた。




私は静かに鍵を回した。



「よお!蒼衣!!」


「…久しぶりだね。たく兄」



そこにいたのは久しぶりのたく兄で、


いつものように明るく元気なたく兄だった。



でも、その日のたく兄はいつも以上にハイテンション。



「なんでそんなにテンション低いんだよー」


「なんで、たく兄はそんなにテンション高いの?」


私がそう聞き返すと、たく兄は大爆笑をした。


ちょっと今日のたく兄のテンションはよくわからない。




「まあ、あれだな!蒼衣に久しぶりに会えたから!」



また、たく兄の冗談だと思いながら、

内心はとても嬉しかった。



「蒼衣、ありがとうな。恭子さんから聞いたよ?蒼衣が俺の家来るの我慢して、俺に勉強に集中できるようにしてくれてたって。」


ポンポン


久しぶりの感触だった。


頭から感じたその温かさを私はずっと待っていた。


「おかげで俺、大学合格したんだ。」



「え…うそ!おめでとう!!」



私は跳ねあげて喜んだ。



たく兄がいつも私にしてくれるみたいに、
私はたく兄の嬉しいことを一緒に喜んだ。



「うん、ありがとう。」


でも、返ってきた返事は少し悲しさが混じっているように聞こえた。

多分気のせいなんだろうけど、少しだけ気になった。


さっきまであんなにテンション高かったのに…。

あのハイテンションの理由は大学に合格してたからでしょ?



やっぱり、今日のたく兄のテンションはよくわからない。




でも、その理由を私はすぐにわかることになる。



この知らせが、別れの意味でもあると言うことを…