窓を覗くと、たく兄の家が見える。
あ、たく兄帰ってきた。
私の部屋から玄関先にいるたく兄の姿を確認できた。
いつもなら、すぐに家から出てきて
「おかえり!」と言って、そのままたく兄の家にお邪魔していたのに…
最近は、そんなことばかりを考えている。
はああー、とため息が出る一方で
ある光景が私の目に飛び込んだ。
たく兄の隣に女の人がいた。
髪が長くてお姉さん風の人だった。
そしてそのまま二人は家の中へ入っていった。
私はその様子を窓にへばりつくようにして見ていた。
ショックが隠せなかった。
こんなの当たり前であるはずなのに、と自分に言い聞かせたが、それでも心の痛みは消えなかった。
「卓巳君の近所って子だよね?卓巳君の家ってどこなのー?」
「ねえ、私と仲良くなってよ!
それで、卓巳君に私のこといろいろ話してくれない?」
「あの子の面倒みていたら、卓巳の私への評価もあがるでしょ!だから利用させてもらってるの!」
たく兄の学校の文化祭や体育祭などを見に行くと、先輩方に言い寄られた。
そして影では私の利用価値を語る人たちもいた。
優しくしてくれるお姉ちゃんはみんなたく兄狙いで、私に優しくしてくれるのは、自分のため。
昔からたく兄はこの上なくモテていた。
だから、彼女がいないなんて、そんなことあるほうがおかしい。
そんなこと、わかっていたのに。
悔しくて、悔しくて、たまらない気持ちになった。
ああ、これが
私の初恋の運命なのか。

