「うははは!凛、顔が赤いでぇ~!?風邪かいな~!?」
「放っておいてください!!」
事情を知っててからかってくる関西男子が憎い。
「思ったより元気そうでよかったよ。それじゃあ、私はこれで失礼するね。」
「あ!シゲ先生、まだ往診するんすか?だったら、車、俺が運転しましょうか?」
「気持ちだけもらっておくよ、瑞希君。それよりも、早くお風呂からあがって、少しでも凛君に構ってあげなさい。その方が私は助かるよ。」
「シ、シゲ先生!?」
思わぬ援護射撃に目を見開けば、変わらぬ表情でご老体は言った。
「蓮君、次の診察日は、メールで伝えるよ。あまり無茶はしないようにね?」
「わ、わかりました。」
「もしかしたら、時間がなくてLINE連絡になるかもしれないからよろしくね。」
「は、はい!」
「じゃあね、みんな。」
そう言うと、キレイな姿勢で表の出入り口から出て行く医師。
「シゲ先生、ありがとうございました!」
「凛をありがとうございます!」
「うははは!おおきに!!」
見送る私達に、シゲ先生は笑顔で答えて去って行った。
「すごいですね、シゲ先生・・・。あの落としで、車の運転をして、診察して回って・・・全部一人でするなんて・・・。」
「それがあの人のやり方だ。けど運転は・・・そろそろ誰かに頼むとは言ってたな。免許返上するって、皇助が聞いたみたいだったからよ。」
「そうなんですか?」
「ああ。だから・・・俺らでよければ、運転引き受けようかって話になっててな。それぐれーしか、恩返しできないからよ。」
「じゃあ、僕も車の免許が取れたらお手伝いします!」
「ははは!そうしてくれ。シゲ先生には、長生きしてもらいてぇし、仕事抜きでドライブに誘ってリフレッシュしてほしいからな~・・・」
シミジミしながら言う瑞希お兄ちゃんを見て思う。
やっぱり彼は、義理堅く、思いやりがあって優しいと。


