彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)




みな様には黙っていましたが、私、菅原凛こと凛道蓮は、ゾンビだけは怖いんです・・・!!



「凛、ホラーはダメなのか?」

「ホラーというか、ゾンビが苦手なんですぅ!」

「凛たんはゾンビがダメなのか・・・」

「気持ちはわかるわ~キモイもの。」

「龍星軍の頭がゾンビが怖いでは、格好がつかん。克服させねば。」

「わははは!やめろ、もったいねぇ!せっかくからかえる面白いネタをよぉ~!」



周りが何か言ってるけど耳に入って来ない。

聞えてくるのは、逃げ惑う人々の悲鳴とそんな人間に食らいつくゾンビの声。



《ゾンビが入ってきた!》

《上に逃げるんだ!》

《いやぁあ!置いて行かないで!!》

《ぐおおおお!!》

「ああああああ!!こっち来ないで―!」

「凛っ!?」



残酷なシーンを目にし、反射的に瑞希お兄ちゃんに抱き付く。

全身が震え、心臓の鼓動がすごく痛い。



「はわわわわ・・・・!」

「だ、大丈夫か、凛!?消すか!?」

「あ、わわわわ!だ、大丈夫です・・・僕1人のために協調性のないことは~」

「わはははは!じゃあ、音量あげようぜ。」

《た、助け・・・!痛ぁあああ!!うぎゃああああああああ!》

「ひゃあああああああああ!?」




餌になった人の悲鳴と、ぐちゃぐちゃベチャベチャというグロテスクな音が大きくなる。

それを見てしまった私の声も大きくなった。



「ふぇえええーん!」



恐怖から逃げるように瑞希お兄ちゃんの腕の中に潜り込む。

あぐらをかいている瑞希お兄ちゃんの中に、すっぽりと収まる身体。



「怖いよぉー!」

「そうだろうな・・・」



私の頭の上でそんな声がしたかもしれない。