「仮に黒木が私のことをしゃべったとしても、刑務所の中での自殺ってよくあることじゃない?薬を売ってる奴が、薬を使ってて、効果が切れて錯乱しちゃって死んじゃうってパターンよ。ああ、思い出した。黒木が収監されてる場所、うちの部下も入ってるところじゃない。差し入れの約束してたのに、忙しくて行けてなかったわぁ~明日にでも、行ってあげなきゃねぇ~」
「よくしゃべる女だ。」
「質問と確認の手間がはぶけて楽でしょう?」
感情のない声で言えば、ベッドがきしんだ。
身支度を終えた男が、私の方へと寄ってきた合図。
「真田瑞希の弟を、捕まえられなくて残念だったな?」
「ええ、あなたに見せられなくて残念よ。」
「あの田渕を手玉にしたガキだろう?くっくっくっ・・・早く会いたいぜ。」
「そのためにも・・・協力してね?」
「当たり前だ。」
契約の意味を込めてキスを交わす。
(凛道蓮・・・・今回はうまく逃げられたみたいだけど・・・今度は逃がさない。)
「帰ってきたら、また抱いてやる。それまで良い子にしてろよ。」
「じゃあ、遅くなったら悪い子になっていいのね?」
「それも悪くないな。」
何も身に着けていない私を見ながら男が笑う。
私も笑う。
ベッドがきしみ、私から男が離れた。
振り返らずに部屋から出て行く。
この部屋にあるのはすべて、今の男が用意してくれた。
壁も床も、天井も、食べ物も、服も、靴も、なにもかもすべて高級品!
一流のものばかり。
「夜景もすてき・・・・」
最高の場所で、たくさんのお金とブランド品に囲まれているけど気持ちは晴れない。
願いがかなわない限り、どんな楽しいことをしても満たされないだろう。
(真田瑞希達を地獄に落とすまでは・・・・!!)
「・・・そのためにも、イケニエになってちょうだーい♪凛道蓮君?」
今回はダメでも次がある。
まだ、チャンスはある。
お楽しみが先延ばしになっただけ。
そんな思いで、よく冷えたワインボトルのコルクを開ける。
――――――ポン!
(この音が・・・あのガキの心臓を撃ち抜く弾丸ならどんなに良いことか・・・・!)
グラスに注いだワインを注ぎながら考える。
「次はどうしてやろう・・・凛道蓮・・・・・!?」
今夜、この町のどこかにいるはずのクソガキを思って、私は真っ赤なワインを飲みほした。


