彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)




「また会っちまったのは・・・・災難だったな・・・。」

「・・・はい。」



やっと、それだけ言えた。



「行こうぜ。」

「え?」

「一緒に行こうぜ、配達?」



私の手をつかむと、優しく握ってくれた。

人混みの中を、手をつないで歩く。

つないだ指先が熱い。

いつもならうれしいけど、今は浮かれた気持ちになれない。



「龍星軍に入りたいって言われたのか?」

「・・・え?」

「そうなんだろう?」

「・・・はい。」



ぎこちなく答えれば、苦笑いされた。



「俺の時もそういうことがあった。断ってもしつこかったから無視した。凛もそうすればいい。」

「・・・また来るでしょうか?」

「来るだろうな。」



私の問いに彼ははっきりと言った。




「あれは蛾だ。」

「蛾?」

「渕上だけじゃない。他の奴らも・・・光に群がっている蛾なんだ。凛っていう光に群がってる蛾。」

「ぼ、くが、光・・・?」

「おう。まぶしい光だ。」




こわごわ聞けば、優しく笑いかけてくれた。





「いちいち気にしてたらきりがねぇ。凛が本当に必要な奴だけ選べ。」

「お兄ちゃん・・・」

「俺が凛を選んだみたいに・・・な?」

「え?」

(それって・・・!?)

「私は・・・あなたに選んでもらえたってことでしょうか・・・!?」

「あん?なんだよ、言わなきゃわかんねぇの?」





いじわるな顔で言われ、心臓が高鳴る。

甘い思いが心に広がるが―――――――――




「チョコちゃん、サナちゃん!」




良い雰囲気になった時、2人きりの会話は中断された。



「お、大原会長さん!?」

「会長。」

「よぉ、2人で配達に来てくれたのか!?」



言われて気づく。

いつの間にか、配達先にである執行委員会のテントまで来ていたらしい。



「配達ご苦労さん!」

「は、はあ・・・。」

「こちらこそ、いつもありがとうございます。」

「ハハハ!よく来た、よく来た!もう休憩だろう!?こっちで休んで行けよ!タコ焼き食べな、チョコちゃん。」



そう言うと、私達を執行部のテントへと引っ張り込むおじいさん。