「また会っちまったのは・・・・災難だったな・・・。」
「・・・はい。」
やっと、それだけ言えた。
「行こうぜ。」
「え?」
「一緒に行こうぜ、配達?」
私の手をつかむと、優しく握ってくれた。
人混みの中を、手をつないで歩く。
つないだ指先が熱い。
いつもならうれしいけど、今は浮かれた気持ちになれない。
「龍星軍に入りたいって言われたのか?」
「・・・え?」
「そうなんだろう?」
「・・・はい。」
ぎこちなく答えれば、苦笑いされた。
「俺の時もそういうことがあった。断ってもしつこかったから無視した。凛もそうすればいい。」
「・・・また来るでしょうか?」
「来るだろうな。」
私の問いに彼ははっきりと言った。
「あれは蛾だ。」
「蛾?」
「渕上だけじゃない。他の奴らも・・・光に群がっている蛾なんだ。凛っていう光に群がってる蛾。」
「ぼ、くが、光・・・?」
「おう。まぶしい光だ。」
こわごわ聞けば、優しく笑いかけてくれた。
「いちいち気にしてたらきりがねぇ。凛が本当に必要な奴だけ選べ。」
「お兄ちゃん・・・」
「俺が凛を選んだみたいに・・・な?」
「え?」
(それって・・・!?)
「私は・・・あなたに選んでもらえたってことでしょうか・・・!?」
「あん?なんだよ、言わなきゃわかんねぇの?」
いじわるな顔で言われ、心臓が高鳴る。
甘い思いが心に広がるが―――――――――
「チョコちゃん、サナちゃん!」
良い雰囲気になった時、2人きりの会話は中断された。
「お、大原会長さん!?」
「会長。」
「よぉ、2人で配達に来てくれたのか!?」
言われて気づく。
いつの間にか、配達先にである執行委員会のテントまで来ていたらしい。
「配達ご苦労さん!」
「は、はあ・・・。」
「こちらこそ、いつもありがとうございます。」
「ハハハ!よく来た、よく来た!もう休憩だろう!?こっちで休んで行けよ!タコ焼き食べな、チョコちゃん。」
そう言うと、私達を執行部のテントへと引っ張り込むおじいさん。


