「凛。」
「りっ君。」
「仕事、手伝います・・・」
「え?いいわよ、凛ちゃん・・・」
「休んどけよ、凛たん。まだ時間あるし・・・」
「わはははは!仕方ねぇなぁ!小遣いやるから、買い食いして来い!」
「遊んでいろ、凛道。」
「いいです。また入隊希望の話をされたらたまりません。」
「凛・・・。」
「このドリンク、配達用ですか?」
「あ、ああ。会長がオーダー入れてくれて・・・」
「じゃあ、持って行きますね。」
「おい、凛!?」
「いってきます。」
テーブルに置かれたドリンクを持って、逃げるように屋台から離れた。
(最悪だ。)
よりによって、こんな日に渕上と会うなんて。
(気づかれるどころか、一緒に活動しましょうなんて・・・冗談じゃないわ。)
そんなこと言う前に、宿題返せ馬鹿野郎。
ヤマトが間に入ってくれたから、何とか誤魔化せたけど・・・
(・・・・・ヤマト・・・・)
なんで、あんな嘘を?
動揺する私をかばうために、凛道蓮に渕上のことを話したとか言ったの?
ヤマトの低い声、怖い声、初めて聞いた。
いつもは陽気な声なのに。
大声で叫ぶだけなのに・・・
「凛!!」
好きな人の声がした。
「瑞希お兄ちゃん・・・」
ふりければ、息を切らした彼がいた。
「エプロン、つけ忘れてるぞ?」
「え?」
言われて気づく。
休憩の時にはずしたエプロンをつけ忘れていたことに。
「ダメだろう?」
「すみません・・・!」
「つけてやるから。」
そう言って、道の端まで私を引っ張って行く。
「動くなよ?」
そう言うと、私の腰にエプロンをつける。
「大丈夫か?」
「はい、きつくないです・・・」
「そうじゃねぇよ。気持ちの方だよ。」
「え?」
顔を見れば、心配そうに私を見ていた。


