彼は高嶺のヤンキー様5(元ヤン)




「自分、人の話を聞かへんな?」




低い声で、ヤマトが語り掛ける。

あの渕上相手に、しゃべっている。




「凛が口聞かん心あたり、わからへんのんか?」

「あんた、G組の・・・」

「ええ加減せぇよ。どこでも、自分が一番やと思うなや。」




ヤマトらしくない声と態度。



「ルノア、こいつ例の転校生だ・・・」



渕上ではない声が告げる。

見なくてもわかった。

私がいじめられるきっかけになった飯塚の声だ。



「マジか、アダム!?」

「こいつが?」



聞き覚えのあるいじめっ子達の声がする。

それにヤマトは、きつい口調のまま言った。



「なんやねん?お前ら、あゆみが丘学園のもんか?」

「だ、だったらなんだ、コラ!?」



中山の声だった。

食ってかかってきた相手にヤマトは――――




「グダグダぬかすと、口に手ぇツッコんで奥歯ガタガタ言わせるど?」




いつもの陽気さのない、冷めたい声で言い放つ。




「凛と話はさせん。いね。」

「いい加減にしてくれない?」

「ルノア!?」




ヤマトに負けない声で、いつも通りの渕上の声が響く。



「私は輝夜姫の頭として、龍星軍の頭である凛道さんと話してるの。」



人をなめ切った言い方に、私の中の怒りが増す。




「話をさせるさせないとか・・・あんたが決めることじゃない。下っ端ふぜいが、調子に乗って生意気な口聞いてんじゃねぇーよ。」



し・・・



(下っ端?)



誰が誰に言った?


誰が下っ端?誰が――――・・・・!?





「てめっ!?誰が――――――――」

「誰が下っ端だっ!!?」





頭の中で、何かがはじけた。

気づけば、大声で怒鳴っていた。

同時に、いじめられた時の記憶が頭を駆け巡る。





「テメーヤマトになんつった!!?」





私の怒声に、ヤマトが振り返る。





「り――――――・・・!?」

「人がしおらしくしてりゃ、勝手ほざきやがって!!俺のダチを侮辱する奴は消えろっ!!」

「凛!?」

「りっ君!?」






視界に映らない相手に向かって怒鳴った。

ヤマトの体で忌まわしい姿は見えなかったが、見えてなくてよかったと思う。

目に入っていれば・・・間違いなく殴りかかっていた。

自覚できるぐらい、みけんにしわを寄せたと思う。

きっと、最悪の顔をしていただろう。

渕上ルノアに対する怒りを、抑えるのに必死だった。

大声を出したことで、心臓がバクバクする。

肩で息をしそうになるのを堪えながら、平静を装って強がる。