「自分、人の話を聞かへんな?」
低い声で、ヤマトが語り掛ける。
あの渕上相手に、しゃべっている。
「凛が口聞かん心あたり、わからへんのんか?」
「あんた、G組の・・・」
「ええ加減せぇよ。どこでも、自分が一番やと思うなや。」
ヤマトらしくない声と態度。
「ルノア、こいつ例の転校生だ・・・」
渕上ではない声が告げる。
見なくてもわかった。
私がいじめられるきっかけになった飯塚の声だ。
「マジか、アダム!?」
「こいつが?」
聞き覚えのあるいじめっ子達の声がする。
それにヤマトは、きつい口調のまま言った。
「なんやねん?お前ら、あゆみが丘学園のもんか?」
「だ、だったらなんだ、コラ!?」
中山の声だった。
食ってかかってきた相手にヤマトは――――
「グダグダぬかすと、口に手ぇツッコんで奥歯ガタガタ言わせるど?」
いつもの陽気さのない、冷めたい声で言い放つ。
「凛と話はさせん。いね。」
「いい加減にしてくれない?」
「ルノア!?」
ヤマトに負けない声で、いつも通りの渕上の声が響く。
「私は輝夜姫の頭として、龍星軍の頭である凛道さんと話してるの。」
人をなめ切った言い方に、私の中の怒りが増す。
「話をさせるさせないとか・・・あんたが決めることじゃない。下っ端ふぜいが、調子に乗って生意気な口聞いてんじゃねぇーよ。」
し・・・
(下っ端?)
誰が誰に言った?
誰が下っ端?誰が――――・・・・!?
「てめっ!?誰が――――――――」
「誰が下っ端だっ!!?」
頭の中で、何かがはじけた。
気づけば、大声で怒鳴っていた。
同時に、いじめられた時の記憶が頭を駆け巡る。
「テメーヤマトになんつった!!?」
私の怒声に、ヤマトが振り返る。
「り――――――・・・!?」
「人がしおらしくしてりゃ、勝手ほざきやがって!!俺のダチを侮辱する奴は消えろっ!!」
「凛!?」
「りっ君!?」
視界に映らない相手に向かって怒鳴った。
ヤマトの体で忌まわしい姿は見えなかったが、見えてなくてよかったと思う。
目に入っていれば・・・間違いなく殴りかかっていた。
自覚できるぐらい、みけんにしわを寄せたと思う。
きっと、最悪の顔をしていただろう。
渕上ルノアに対する怒りを、抑えるのに必死だった。
大声を出したことで、心臓がバクバクする。
肩で息をしそうになるのを堪えながら、平静を装って強がる。


